”五回も十回も描いて、結局一番最初に描いたやつが一番いいんです。”


    • 終わってみて、全体的な感想は。


「8割くらいやり直したいなと思います。」

    • そうですか?


「まあ、でも、一生そうなんだろうなとおもいます。〆切があるものはそうです。」


「ただ、白黒のカットなんか描いていたとき、
 最初描いて、何かちょっとここがイヤだからって描き直すでしょう、
 ひとつの白黒のカット描くのに五分とか十分とかだとすると、
 何回もおなじものを描けるじゃないですか。
 で、五回も十回も描いて、結局一番最初に描いたやつが一番いいんです。たいていそう(笑」

    • そうなんですね!


「不思議ですよ。
 イヤだから描き直していってるのに、
 結局最初のが一番マシなんです(笑
 これって才能がないってことなんですかねえ・・・これはダメな人の証明なのかもしれない(笑」

    • 今後のお仕事の方向性というのは、どんなふうにイメージされてらっしゃいますか。


「できたら自分で好きなものを描いて、その絵が売れて、
 それで生活して行ければ一番いいです。
 でも、別に、100%生活のためだけにイラストレーターの仕事を引き受けてるワケじゃなくて、
 こういう、印刷されて綴じられた本、という形になったものは
 昔からスキなんです。
 だから、経済的に困ってなくても、
 タブローばっかりじゃなくて、版画みたいなのもやるでしょうし、
 冊子みたいなのもやるとおもいます。」

    • うえださんにとって、絵とは何でしょうか。


「論理的に何か伝えたいことがあってその手段って事ではないです。
 あくまでそれ自体が目的です。」


「ただ、自分で何を描くかを決めるときに、嫌いなものは描かないので、
 何故それを描くかということをつきつめていくと、
 自分という人間が見えてくるのかもしれない。
 でも、それは別に目的じゃないです。べつにどうでもいい。」

    • 絵を描くということを仕事として選ばれたわけですよね、

  それについて疑問を感じたりすることはなかったですか。


「他にやりたいことがない(笑
 若いとき、20代30代くらいのときはね、
 8ミリで映画を撮ったりとかビデオを撮ったりとかしてたんです。
 いろんなことがやりたかった。
 ビジュアルに限定されてはいましたけどね。
 小説描きたいとかミュージシャンになりたいとかじゃなかったけどね。
 動くか静止してるかは別として、映像関連の狭い中ではあるけれど、
 やりたいことはブレてた。
 それから、この年齢になって絵を描くことに決めた。
 ちょっと20年遅れた感じなんですけどね。
 そのころきかれたら違う答えだったと思うけど、
 いろいろやった上で、最後に残ったのが、一番最初にもどって、一人で絵を描くことだった。
 映画とかって、まあ、個人でも作れないことはないけど、
 基本的にチームで、人と関わり合いながら作るもんでしょう、
 でも性格が悪いので、一人でないとダメなんですよ(笑」

    • 性格が悪いって何ですか(笑


「自分の思い通りにならないときが済まない。とたんにやる気をなくす(笑
 一人で絵を描いてたら全部自分のおもったとおりでしょ。」



fin.